フィクションの世界では、時に長命な人達が登場します。
それは人間だったり、はたまた人間だけど、何かの理由で寿命がとても長かったり……。
今回は、そういった要素があるアニメ作品と、その問題に対する描き方について、考察させて頂きます。
該当する作品は、数多くあると思います。
例えば「ロードス島戦記」の主人公パーンと、ヒロインのディードリットとか。
二人は短命な人間と長命なエルフの夫婦なので、切ない要素を持っています。
それに、十二国記の登場人物も。
メインキャラクターの多くは仙人など、老いが無い人達ですが、普通の人間も多く出てきます。
このままだと不老不死の陽子と、普通の寿命の親友・楽俊は、あっという間に別れを迎えてしまう……。
もちろん、彼が仙人になって同じ寿命を生きる可能性もあるので、まだ未来は分かりませんが。
あとは「ラムネ&40騎士」シリーズも。
ヒロインのミルクちゃんは続編で、人間の世界でラムネスと生きる道を選びます。
ハラハラワールドとは時間の流れが違うので、姉達や父親よりも、早く年をとってしまう。
承知の上で選んだ道でも、やはり切ないと思います。
特に、娘に置いていかれる父親の心情は……。
それに「黒塚 KUROZUKA」も。
主人公の九郎と黒蜜は、吸血鬼であり、何世紀にも渡って生き続けています。
ただ、この作品では中心になる二人が共に長命なので、寿命の差による別離や、切なさという要素は少な目かも……?
「BLOOD+」(ブラッドプラス)も。
主人公の小夜や従者のハジ、そして妹のディーバや関係者は、皆長い寿命を持っています。
しかも小夜と妹は、定期的に三十年もの眠りを必要とする体質。
眠りから覚めたら、浦島太郎のように周りの時間が流れている……そんな宿命を背負っています。
けれど義兄のカイや姪達など、いつか目覚めた時に迎えてくれる人がいるので、救いはありますが。
何より、従者のハジは何があろうとも、彼女を待っていてくれるハズです。
長命のキャラクターが登場する作品はまだまだ有るのでしょうが、すぐに思いつくのは上記の作品です。
そして、これからお話する作品も、「寿命の差」というテーマを内包しています。
それは、言わずと知れた人気作「犬夜叉」。
本作は妖怪や仙人が登場するので、長命な者が大勢登場します。
そして、ヒロインのかごめちゃんを始めとする、普通の人間達も。
主人公の犬夜叉は少し特殊な生い立ちで、大妖怪の父親と、人間の母親の間に生まれました。
その為、生粋の妖怪ほどではなくても、人間よりずっと長い寿命を持っているようです。
現に五十年の眠りから覚めた時、変わらない姿の彼に対して、あどけない少女だった知人の楓は、すっかり貫禄のある老婆になっていました。(もっとも、封印されている間、成長が止まっていた可能性はありますが)。
前述の通り犬夜叉と違い、恋人のかごめちゃんは普通の人間です。
類まれな霊力を持っていても、生きる時間の長さは変わらないでしょう。
対して、友人の弥勒と珊瑚は、二人とも人間。
一緒に年をとり、恐らくそれほど変わらない時期に最後を迎えることでしょう。
それを思うと、数十年後に老婆になったかごめちゃんの横に、変わらない少年の姿の犬夜叉がいる……という未来が予想されます。
二人とも、そういったことはとうに覚悟の上で、共に生きる道を選んだはず。
ことさら嘆いたり、恨み言を言ったりはしないでしょう。
でも心の中で、時に切なく思ったりする時は、あると思います。
女性でありながら、自分だけ年をとるかごめちゃんも。
妻も仲間たちもほとんどいなくなった後、一人残される犬夜叉も。
仲間のうち、妖怪の七宝や雲母は、変わらない姿で彼の傍にいてくれるとは思いますが。
そして彼らや仲間の子孫が、側にいてくれるとは思います。
そして、犬夜叉とかごめちゃんの姿は、兄の殺生丸と、パートナーのりんちゃんの未来の姿も投影しています。
こちらは半妖どころか、生粋の大妖怪の殺生丸。
寿命は弟の犬夜叉よりも、ずっと長いと思われます。
そしてパートナーのりんちゃんは、霊力も無い、ごく普通の女の子。
彼女はあっという間に年をとり、そして残された殺生丸と手下の邪見は、その後も長い長い時を生きていくことになります。
実際に、アニメの162話でその問題に触れたエピソードがありました。
妖怪と人間の寿命の差を知った上で、りんちゃんは殺生丸達と共に生きることを選びます。
「ねえ、殺生丸さま。いつか、りんが死んでも……りんのこと、忘れないでいてくれる……?」
ぽつりと漏らした、りんの問い。
それに対する殺生丸の答えは、素っ気ないものでした。
「馬鹿なことを……」
しかし、この言葉が
「当たり前のことを訊くな」
と聴こえたのは、私だけでしょうか。
殺生丸の優しさが垣間見える瞬間でした。
何にせよ殺生丸とりんも、いつか来る別れを承知で、それでも共にいることを選びました。
きっとそれが、彼らにとっての幸せなのだと思います。
また「犬夜叉」と同じ作者が描いた作品「人魚の森」は、普通の人間でありながら、人魚の肉を食べて不老不死になってしまった男女の物語です。
五百年もの長い間、一人ぼっちで放浪してきた湧太(ゆうた)と、不老不死になったばかりの真魚(まな)。
初めて同じ時間を歩める相手と出会った湧太は、真魚と旅を始めます。
そして真魚にとっても、湧太は大切な存在。
彼を殺そうとした相手に、真魚は叫びます。
「貴様が湧太を殺したら、私が何年かかっても、貴様の首をとってやる」
「湧太が死んだら、そうするしかない……」
同じ体質だからこそ、ただ一人の相棒になれる。
そんな二人の、切なくも救いのある関係を描いた作品です。
寿命の差について描いた作品は、まだまだあると思います。
これからも、素敵な作品に出会えたら、と思っています。
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