昨夏の「終物語」(おわりものがたり)にて、シリーズにひとまず決着がついた物語シリーズ。
その中で重要な役割を果たしたのが、主人公の後輩女子・忍野扇(おしの おうぎ)ちゃんです。
可愛い女の子でありながら全てを見透かし、陰で暗躍し、慇懃無礼に主人公を嘲笑う……。
「後輩だけどラスボス」「可愛いけど不気味」
そんな扇ちゃんの、独特過ぎる名言をご紹介します。
忍野扇とは?
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
アニメ「終物語」より引用
扇ちゃんの本格的な登場は、「終物語」から。
いつの間にか、主人公の阿良々木暦(あららぎ こよみ)くんに後輩として認識されていた、一年の女子。
後輩の神原(かんばる)さんを通じて、紹介されました。
光の無い漆黒の目に、ショートボブの黒髪。
黒いタイツにインナーと、とにかく黒い彼女。
声の担当は水橋かおりさんで、主題歌も担当しました。
ちなみに、なぜか制服の袖が異常に長い「萌え袖」でもあります。
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
アニメ「終物語」より引用
一見可愛い女の子ですが、常に浮かべた薄笑いと、丁寧な口調で先輩を馬鹿にする、独特の言動。
「尊敬する阿良々木先輩」と言った口で、彼を「あなた方は本当に愚か者ですね」とこき下ろす。
全てを知り、見透かす彼女から見たら、右往左往する彼は愚かに見えるのでしょうが……。
しかし詳しくは後述しますが、彼女が暦くんを馬鹿にするのは、ある意味「自虐」と言えるかもしれません。
扇ちゃんは暦くんにとっての恩人、忍野メメの姪を名乗っています。
しかし、エピソードによっては男子の「扇くん」として登場することも。
周囲がそれを疑問に思わず、受け入れているのが扇ちゃんの底知れなさを感じさせます。
扇ちゃん(扇くん)とは、一体何者なのか。
終物語でのインパクト大の登場
「終物語」で、いきなり以前からお馴染みのメンバーのように、登場した扇ちゃん。
視聴者からすると「貴方は誰!?」という感じですが、暦くんを始めとする登場人物達は普通に受け入れています。
「ああ、扇ちゃんか」という具合に。
そして彼女は「阿良々木先輩」を相手に、赤信号について滔々と持論を述べました。
インパクト大な登場シーンです。(以下は、会話の一部を抜粋しています)
「交差点の信号が、全て赤になる瞬間があるのをご存知ですか。
先輩だって、毎日のように見ているハズです。
あちこち交通事故にならない為に、そんな現象を起こしているんですよ。
分かっていませんね、この愚か者は」
「縦の信号が赤になってから、横の信号が青になるまでの間に、どの信号にも必ず3秒のタイムラグがあるんですよ。
つまり、全てが停止する。
交差点における、空白の3秒間といったところです。
逆に、信号が全て青になる瞬間なんてありません。
危険を示す赤信号で世界が満たされた瞬間こそ、いつもより安全な時間であり。
逆に安全を示す青信号で世界が満たされた時、世界のどこよりも危険な場所が出来上がってしまうという矛盾……」
「頭が悪い癖に、理解は早いですね阿良々木先輩は」
「危ない目に遭いたくなければ、横断歩道を渡らなければいいんですよ」
「例えば、私が言い出すべきなのです。
世の中というのが、どんなに危険な場所なのか。
世界は平和で、夢と希望に溢れていて、救いに満ちていて。
人と人は愛し合う為に生まれてきて、仲良くするべきで、子供には幸せになる義務があるとか。
そんなことを陶酔しながらペチャクチャ言っているから、簡単に足元を掬われるんです」
「戦地の子供たちは教育を受けていなくても、もっとしっかりしていますよ?
少なくとも、人生に対しては貪欲です」
忍野扇は時間を越えた存在?
時間軸が少し遡り、「囮物語」(おとりものがたり)。
語り手である千石撫子(せんごく なでこ)ちゃんの前に現れたのが、扇ちゃんでした。
初対面のハズなのに撫子ちゃんの名前を呼び、事情を知っているかのような発言を連発する扇ちゃん。
警戒し怯える撫子ちゃんを見て、扇ちゃんは「しまった。私はまだ、千石ちゃんと知り合ってなかった~。順番間違えた~」と、意味深なコトを呟きました。
更には「まあいいか。千石ちゃんの件は基本的に番外編だし、羽川のところの翼先輩みたいなことにはならないだろう」と続けます。
なんだろう、この黒幕感は……。
そして彼女が与えた情報と白いシュシュが切っ掛けで、撫子ちゃんは思わぬ暴走を始めます。
まるで、扇ちゃんが間接的に操ったかのように……。
また、ある中学生は怨みを持つ詐欺師を襲撃した際に「やっぱりこの街に戻ってた……扇さんの言った通りだ」と、呟きました。
実は忍野扇は巨乳にライバル心?
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
アニメ「終物語」より引用
それほど豊かではない、扇ちゃんのバスト。
そのせいなのか、それともただ単に、並外れた聡明さを警戒しているのか。
「超人」であり、作中屈指のバストを持つ羽川さんに、あからさまな挑発をする扇ちゃん。
慇懃無礼は彼女のデフォルトですが、それにしても羽川さんに対しては極端です。
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
アニメ「終物語」より引用
「(メメ叔父さんから)天才と聞いていたけれど、それほどでもありませんねえ」
「なんかガッカリだなあ……その程度の謎が分からないなんて」と。
そして誰にでもにこやかな羽川さんが、扇ちゃん相手だと険しい表情を見せます。
聡明な羽川さんだからこそ、扇ちゃんの底知れなさ、不気味さを感じ取り警戒しているのでしょう。
裏を返せば、「あの」羽川さんが警戒するほどの危険人物と言うことです、扇ちゃんが。
なりゆきで、同級生の母親が失踪した事件の謎を解くことになった、羽川さんと暦くん。
そこに現れた扇ちゃんは、羽川さんが分からない謎を、自分なら解けると豪語します。
「黙っちゃってつまらないなあ。所詮貴女は、全盛期でも大したことなかったんじゃないですか?」
「駄目ですよ~、羽川先輩。愚か者を甘やかしちゃ」
「少しは自分で考えさせてあげないと。でないと阿良々木先輩は、いつまでも愚かなままです」
羽川さんを窘めるような言い方で、暦くんまでディスる扇ちゃん。
なんていうか、念入りです。
更に羽川さんへ向かって、「巨乳を謝って頂ければ、私は鷹揚な対応を考えていますよ」
「おっぱいに全部栄養を回してしまいました。
年下で後輩の扇ちゃん、この簡単な問題が私にはどうしても解けないので、答えを教えて下さいと」
と、彼女の巨乳弄りながらネチネチいたぶります。
どれだけこだわっているんだ、胸の大きさに……!!
結局、羽川さんが華麗に謎を解いて一矢報いましたが……。
忍野扇ちゃんの正体
「終物語」の最後でようやく判明した、扇ちゃんの正体。
それは「くらやみ」ではなく、暦くんの心から生まれた分身でした。
彼が抱いた、自分に対する後ろめたさ、罪悪感。
「罰せられたい」という自罰的な気持ちが、形をとって現れたのが扇ちゃんだったのです。
彼女が事あるごとに暦くんを苦しめ、ネチネチ責めていたのは、実は暦くん自身が、自分を責めていたのと同じことだったのです。
ラストでピンチの扇ちゃんを助けたのは、自分を粗末にしていた暦くんが「自分を大切にする」ことが出来るようになった、ということ。
なんとも驚きのどんでん返し、です。
そう思って見ると、これまでの扇ちゃんの言動が違う味わいを持ってくるというもの……。
ヒロインの一人で、可愛い後輩で、憎たらしい黒幕で、そして主人公の影。
扇ちゃんは、なんとも複雑なキャラクターです。
煙に巻くようなセリフの数々は、やはり独特の含蓄がありますよね……。
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